【8697】日本取引所グループ 2026年3月期決算分析

高配当銘柄の分析

配当28%増配&総還元106%の”株主思いな独占企業”を冷静に評価する


3行要約

  • 今期(FY2025)は営業収益+22.5%、営業利益+29.0%、当期利益+29.5%と全指標で大幅増益の優秀な決算でした。
  • 配当は前期の47円から61円へ+28%の大幅増配。来期(FY2026)も61円を維持予定で、減配リスクは低いと判断しています。
  • ただし来期は費用増の影響で利益微減の見込み。バリュエーション(PER約26倍)もやや高めで、「今すぐ大量買い増し」よりも株価調整時を狙う戦略が無難と考えます。

今期の見どころ

「日本市場の取引所」という唯一無二のビジネスモデル

日本取引所グループ(JPX)は、私たちが株式や債券を売買する際に必ず通る「取引所インフラ」を運営している会社です。東証プライム・スタンダード・グロース市場を傘下に持ち、日本株市場が賑わえば自動的に収益が増える、いわば「日本の株式市場そのものに投資する」に近い銘柄です。

今期(2026年3月期)は、その強みが存分に発揮された決算でした。

業績ハイライト:理想的な増益構造

(※株価・指標は2026年4月28日終値時点)

連結業績推移(FY2024実績 vs FY2025実績)

営業収益
1,622億円 →
1,987億円
▲ +22.5%
営業利益
901億円 →
1,163億円
▲ +29.0%
当期利益
611億円 →
791億円
▲ +29.5%
1株配当
49円 →
61円
▲ +28.0%

「収益の伸び(+22.5%)が費用の伸び(+11.4%)を大きく上回る」という、株主にとって理想的な構造での増益です。

今期の最大サプライズ:清算関連収益が+57.4%増

下のグラフで一目瞭然ですが、今期の決算を最も引き上げたのは「清算関連収益」でした。

セグメント別収益(FY2025) — 単位:億円

棒グラフ右の数字は前年比増減率

取引関連収益 +19.9%
774億円
清算関連収益 ★ +57.4%
542億円
情報関連収益 +5.5%
337億円
上場関連収益 +7.9%
187億円
システム関連収益 +4.3%
138億円

清算関連収益とは何か? 簡単に言うと、金融機関が金利スワップ(将来の金利をあらかじめ交換する取引)を行う際、担保を預ける仕組みがあります。JPXはその担保を預かって管理する役割を担っており、金利が上がると、その担保から生じる「運用益」が増える構造になっています。

日本がいよいよ「ゼロ金利の時代」を卒業しつつある今、この収益が急増しているわけです。「株の取引所」としての顔だけでなく、「金利上昇の恩恵も受けられる」という新しい収益源が育ってきていることは、長期投資家にとって非常にポジティブな変化です。


気になった点

気になる点①:来期(FY2027)は利益が微減見込み

来期(FY2026)は営業収益こそ+3.2%増える見込みですが、システム投資などの費用が+8.9%増えるため、営業利益は▲1.1%、当期利益は▲2.1%の微減予想です。

「増収なのに減益」という見出しが先行してネガティブに語られることがありますが、費用が増える背景は”将来への投資”であり、単純に悪材料とは言い切れません。ただ、買い増しを検討している方は、この点を頭に入れておく必要があります。

気になる点②:バリュエーションは割安とは言えない

(※2026年4月28日終値1,952円時点)

  • 来期予想PER:約25.9倍
  • PBR:約5.82倍
  • 配当利回り:約3.12%

ROE23%という高い資本効率を考えれば”不当に割高”とまでは言えませんが、高配当株の中では決して割安な水準ではありません。大きな株価調整局面があれば、改めて魅力度が増す銘柄です。

気になる点③:デリバティブ部門の一時低迷

金融デリバティブの取引高が通期で▲6.7%と落ち込んでいます。これは2025年4月の市場急変動の翌年の反動によるもので、第4四半期には回復傾向が見られます。一時的な要因とは思われますが、引き続き推移を確認したいところです。


長期配当目線での評価

「配当が削られにくい」銘柄かどうかを確認する

高配当株投資で最も大切なのは「減配リスクの低さ」です。その観点でJPXを評価してみましょう。

✅ 配当性向は約79〜81%:高めだが計画的に維持

利益の約8割を配当に充てるというのは、一般的には「高め」の水準です。しかしJPXの場合、中期経営計画(2025〜2027年度)に「3カ年で2,300億円規模の株主還元」を明示しており、計画に裏打ちされた高還元です。経営陣が数字を公表している以上、来期利益が微減でも61円配当を維持する強い意思が読み取れます。

✅ 自己株取得200億円(発行済株式の約3.9%)を発表

来期は配当に加え、200億円の自己株買いも予定しています。これにより「総還元性向(配当+自己株買い÷当期利益)」は約106%となり、稼いだ利益以上を株主に返す積極的な姿勢が確認できます。

✅ 中期経営計画の財務目標を「初年度」で達成済み

中計の3年後(FY2027)の最終目標とされていた「当期利益760億円」を、なんと初年度のFY2025時点で791億円と既に超過達成しています。計画の信頼性が高く、将来の配当維持に対する安心感につながります。


5項目の採点表

(各20点満点、合計100点満点)

長期配当投資 5項目スコア(各20点満点)

① 収益力 18 / 20
営業利益率58.5%。自然独占型ビジネス+金利収益の多様化が進行中。
② 割安性 12 / 20
PER25.9倍・PBR5.82倍はやや高水準。配当利回り3.12%は許容範囲。
③ 財務健全性 17 / 20
親会社帰属純資産3,450億円、営業CF1,077億円。実態の財務は健全。
④ 株主還元 19 / 20
総還元性向106%・自己株買い200億円発表済み。中計3カ年2,300億円還元方針。
⑤ 将来性・トレンド 17 / 20
資産運用立国・金利上昇・デジタル化が追い風。参入障壁の高さが持続的競争優位。
合計スコア 83 / 100

総合判断

✅ 長期保有継続:推奨 / △ 買い増し:条件付き検討

保有継続を推奨する理由

JPXは「日本市場が元気であるほど稼げる」という、日本経済そのものと連動したビジネスモデルを持っています。今期の決算はその特性を最大限に活かした結果であり、配当28%増配・自己株買い・ROE23%超という数字は、長期保有銘柄としての信頼感を高めるものです。

「資産運用立国」という国の政策方針も追い風となっており、長期で見たビジネス環境は引き続き良好です。配当利回り3.12%(※2026年4月28日終値時点)は、安定配当を求める投資家にとって十分に実用的な水準です。

買い増しは”焦らず待つ”戦略が有効

現在のPER25.9倍・PBR5.82倍(※同上)という水準は、日本株全体と比べても割安とは言えません。地政学リスクや株式市場の低迷局面では、売買代金が大きく落ち込む可能性があり、その際には株価にも調整が入ることが想定されます。

目安として、株価1,700〜1,800円前後まで調整した局面が、長期配当目線での買い増しを検討しやすいタイミングと考えます。今すぐ飛びつくよりも、そのような場面に備えてキャッシュを温存しておく判断も賢明です。


この記事の補足コメント

いくつか補足しておきたい点があります。

バランスシートの見方に注意

JPXの連結バランスシートは総資産71.6兆円という巨額になっていますが、この大部分は子会社・日本証券クリアリング機構(JSCC)が預かっている「清算引受資産(担保など)」です。これは実際の事業資産とは性質が異なるものです。財務健全性を判断する際は、親会社に帰属する純資産(3,450億円)を基準に見ることが適切です。

2024年10月に株式分割を実施済み

2024年10月1日に1株→2株の株式分割が行われています。配当・EPSなどの数値は過去に遡って修正済みで、前年比較に支障はありません。

来期予想の前提は「保守的」

来期FY2026の業績予想は、株券等売買代金を「7.5兆円/日」として計算されています。2025年3〜4月の実績が6〜10兆円/日水準であったことを踏まえると、保守的な前提といえます。市況が好調に推移した場合、業績の上振れ余地があります。


【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事はPythonとAIを活用して企業の一次資料(決算短信等)を要約したものを使用しており、情報の正確性を完全には保証するものではありません。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
※ 本記事は特定の銘柄への投資を勧誘・推奨するものではありません。記事に記載された内容は、執筆時点での公開情報や個人的な見解に基づいています。
※ 投資にかかわる最終的なご判断は、必ずご自身の責任において行われますようお願い申し上げます。本記事を利用したことによるいかなる損害についても、当ブログは一切の責任を負いかねます。


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