こんにちは、ネコのシッポです。
新NISAをきっかけに投資信託を始めた方も多いと思いますが、その「投資信託を作って運用している側」の会社にも、実は上場企業として投資できるものがあります。今回取り上げるSBIグローバルアセットマネジメント(4765)は、まさにその一社。SBIアセットマネジメント・SBI岡三アセットマネジメント・レオス(「ひふみ」シリーズで有名ですね)の3社を束ねる資産運用の持株会社です。
2026年7月27日に出た2027年3月期の第1四半期決算は、見出しの数字だけ見ると「売上4.5倍!」と派手なのですが、中身をていねいに読むと「実力」と「見かけ」が混ざっています。高配当・連続増配という魅力がある一方で、注意して読みたいポイントもありました。長期の配当目線で、事実ベースに落ち着いて整理していきます。
(※株価・指標は2026年7月24日終値時点のものを使用しています。決算発表当日の終値がデータに未反映だったため、直近の確定値を採用しました)
三行要約
- 売上高12,823百万円(前年同期比4.5倍)で第1四半期の全項目が過去最高。ただし高倍率の主因は3社統合による「規模の合算」で、純粋な自力成長ではありません。
- 中身は悪くありません。株式数+54%に対しEPS+80%と希薄化を上回り、営業利益率も18.0%→20.8%へ改善。中間配当は9.50円へ増配(8期連続の中間増配)。
- 一方で通期の業績予想も期末配当予想も「未定」。前期の配当性向は約80%と高めで、割安感も限定的(PBR約2.4倍)。長期保有の材料は厚いが、割安性では慎重に見たい一社です。
今期の見どころ
第1四半期(2026年4〜6月)の成績はこちらです。
| 項目 | 前年1Q | 当1Q | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,844百万円 | 12,823百万円 | 4.5倍 |
| 営業利益 | 513百万円 | 2,663百万円 | 5.2倍 |
| 経常利益 | 794百万円 | 2,701百万円 | 3.4倍 |
| 親会社株主帰属 純利益 | 501百万円 | 1,389百万円 | 2.8倍 |
| EPS(1株利益) | 5.59円 | 10.06円 | +80% |
| 営業利益率 | 18.0% | 20.8% | +2.8pt |
「4.5倍」と聞くとすごい成長に見えますが、ここは冷静に。前の年の同じ時期(2025年4〜6月)には、SBI岡三アセットマネジメントとレオスの2社がまだ連結(グループの合算対象)に入っていませんでした。今期はこの2社がフルに加わっているので、単純に「会社が2つ増えた分だけ数字が乗った」というのが増収増益の一番の理由です。ここを「純粋に事業が4.5倍伸びた」と読むのは早合点になります。
では中身に見どころがないかというと、そうではありません。注目したいのは「希薄化を上回るEPS成長」です。統合では新しい株式を発行するため株数が増え、1株あたりの利益(EPS)は薄まりやすいのですが、今回は株式数が+54%増えたのに対しEPSは+80%も増えました。つまり「頭数(株数)以上に、1株の中身が濃くなった」わけです。営業利益率も18.0%から20.8%へ改善しており、統合が「規模の合算」だけでなく「稼ぐ力の向上」にもつながり始めている点は前向きに評価できます。
グループの運用資産残高は約14.0兆円(前年同期末比+99.2%)まで拡大し、投資信託協会の集計では国内第9位に浮上しました。「ひふみ」のレオスや、話題の「SBI・NASDAQ100」なども好調です。
気になった点
派手な数字の裏で、長期投資家としては次の3点を押さえておきたいところです。
① 通期予想が「未定」
会社は「金融市場の動向を1年通して見通すのは難しい」として、通期の業績予想を出していません。運用会社は預かった資産の残高に応じて手数料(信託報酬)をいただくビジネスなので、株式市場が上がれば残高が増え、下がれば減るという、相場に業績が直結する構造です。その分、先行きの数字を約束しづらいのは事実で、投資家からすると「着地が読みにくい」状態が続きます。
② 前期の一時的な利益の反動
前年の1Qには「暗号資産売却益」が約2億円(営業外収益)ありました。今期はこれがないため、経常利益の伸び(3.4倍)が営業利益の伸び(5.2倍)より小さくなっています。裏を返せば、本業(営業利益)はそれだけ強く伸びているとも読めます。
③ 少数株主持分の大きさ
純資産420億円のうち、約97億円(23%)はグループ子会社の「他の株主」の持ち分です。連結全体で利益が伸びても、その全部が「自社の株主の取り分(EPS)」になるわけではない、という点は覚えておきたいところです。
長期配当目線での評価
この会社の一番の魅力は、なんといっても連続増配です。会社資料によれば期末配当は2026年3月期まで17期連続で増配、中間配当も今期予想で8期連続の増配(9.00円→9.50円)。過去10年をさかのぼっても減配は見当たらず、実質的に「累進配当(下げない配当)」に近い運用が続いています。
期末配当の推移をグラフにするとこの通りで、きれいな右肩上がりです。
株価567円(※2026年7月24日終値)に対する配当利回りは、前期の年間配当22.75円で計算すると約4.0%。高配当株として十分に検討対象になる水準です。
ただし、手放しで喜べない点もあります。前期の配当性向は約80%と高めです(年間配当22.75円 ÷ EPS28.3円)。配当性向とは「稼いだ利益のうち、どれだけを配当に回したか」の割合で、80%は「利益の大半を配当に回している」状態です。株主還元に積極的なのは魅力ですが、裏を返せば利益が伸び続けることが、増配・配当維持の前提になります。EPSの成長が止まると、増配余地は小さくなりやすい構造だという点は理解しておきたいところです。
さらに今期は、通期の期末配当予想が「未定」(開示されているのは中間9.50円のみ)。年間でいくらになるかは、下期の業績と相場次第という状態です。
五項目の採点表
| 評価軸 | 点数 | コメント |
|---|---|---|
| 収益力 | 18/20 | 全項目1Q最高&利益率改善。ただし高倍率は統合効果が主因。 |
| 割安性 | 13/20 | 実績PER約20倍・PBR約2.4倍で割安感は限定的。利回り約4%が下支え。 |
| 財務健全性 | 17/20 | 自己資本比率59.6%・実質無借金・ネットキャッシュ約237億円と堅牢。 |
| 株主還元 | 16/20 | 17期連続増配は立派。反面、配当性向約80%・通期配当が未定。 |
| 将来性・トレンド | 17/20 | 2030ビジョン(運用残高50兆円)は壮大。ただし達成は相場・M&A次第。 |
| 合計 | 81/100 |
見ての通り、財務健全性・将来性・収益力が高く、割安性が一段低いバランスです。「質は高いが、値段は安くない」タイプの銘柄と言えます。
総合判断
長期の配当投資という目線で整理すると、この会社には保有継続を支える材料が多いというのが率直な印象です。財務は自己資本比率約60%・実質無借金・ネットキャッシュ約237億円と堅く、17期連続増配・中間8期連続増配という株主還元の実績も厚みがあります。運用残高の拡大トレンドも続いています。
一方で、新規に買い増しを検討する際には慎重に見たいポイントも同じくらいあります。①前年同期比の高い伸び率は統合による「見かけ」が主因で、自力成長の実力値は来期以降の数字を待つ必要があること。②通期の業績・配当がともに「未定」で先行きが読みにくいこと。③配当性向が約80%と高く、増配の継続はEPS成長が前提であること。④PBR約2.4倍・実績PER約20倍と、割安感は限定的なこと(※2026年7月24日終値時点)。
まとめると、「すでに保有している人はじっくりホールドしつつ増配の恩恵を受ける」場面、新規の方は「通期配当予想の開示や、統合効果がはく落した後の自力成長を確認してから」でも遅くない、という整理になります。もちろん最終的な判断はご自身で。今後は、運用報酬率の向上(0.23%→0.30%目標)と通期配当予想の開示タイミングを、私自身のチェックポイントにしておきます。
この記事の補足コメント
SBIグループの資産運用会社という性質上、配当性向が高めに設定されているのは「訳あり(=グループ方針として還元重視)」の面があります。JTなどと同様、単純に「配当性向が高い=危険」と機械的に判断するのではなく、その背景と利益の伸びをセットで見るのが大事だと考えています。2030ビジョンで掲げる「運用残高50兆円・EPS130〜150円」は非常に野心的な目標で、達成できれば化けますが、相場環境やM&Aの成否に左右される部分が大きいので、あくまで「夢」ではなく「進捗」を毎回の決算で淡々と確認していきたいところです。
【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事は企業が公表した決算短信をもとに、筆者(ネコのシッポ)が独自の視点で分析・執筆したものです。。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
※ 本記事は特定の銘柄への投資を勧誘・推奨するものではありません。記事に記載された内容は、執筆時点での公開情報や個人的な見解に基づいています。
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