【1939】四電工 2027年3月期 第1四半期決算分析:営業利益+92.5%の好発進、利回り4.19%を支える「DOE5%」という新しい約束

高配当銘柄の分析

こんにちは、ネコのシッポです。

7月31日、四国の総合設備工事会社である四電工(1939)が2027年3月期の第1四半期決算を発表しました。決算発表ラッシュのまっただ中で、四国の中堅企業の決算は見落とされがちですが、今回は営業利益が前年同期比で約1.9倍という、なかなか目を引く内容でした。

この会社、実は今年1月に株主還元方針を大きく変えています。「配当性向40%以上」から「配当性向60%程度・DOE5.0%程度」へ。高配当株を長く持つ立場からすると、業績の数字よりもむしろこちらのほうが重要かもしれません。いつも通り、決算短信と中期経営指針という一次情報をもとに、淡々と見ていきます。

三行要約

  • 第1四半期は売上高+18.9%、営業利益+92.5%の大幅増収増益。営業利益率は7.2%→11.7%へ改善し、通期の利益進捗率は約30%と好スタート。
  • 年間配当は84円予想(前期77円から7円増配)で、配当利回りは約4.19%(※2026年7月31日終値2,007円時点)。過去10年間で減配はありません。
  • ただし通期の純利益は前期の特別利益の反動で△12.0%の減益予想。配当性向は60.2%と高めで、下支えは新方針の「DOE5.0%程度」に移っています。

今期の見どころ

まず、数字を並べます。

項目(連結)前年同期今期1Q増減率
受注高30,442百万円33,673百万円+10.6%
売上高20,264百万円24,089百万円+18.9%
営業利益1,462百万円2,815百万円+92.5%
経常利益1,539百万円2,928百万円+90.3%
四半期純利益1,051百万円1,959百万円+86.4%

売上が約19%増えたのに対し、営業利益は約93%増。利益が売上の伸びを大きく上回っています。

なぜこうなったのか。理由は「工事の利益率」です。

設備工事会社の利益は、ざっくり言えば「請け負った工事を、見積もった原価の中でどれだけきれいに仕上げられたか」で決まります。その成績表が完成工事総利益率という指標で、今回はここが大きく改善しました。

項目前年同期今期1Q
完成工事総利益率17.96%21.88%
販管費率11.74%10.64%
営業利益率7.21%11.69%

会社の説明は「工程・原価管理の徹底を通じて、高水準の手持ち工事の着実な進捗と収益性の向上に努めた結果」。地味な表現ですが、資材や人件費が上がり続けるこのご時世に、工事の採算を4ポイント近く改善させたのは素直に立派だと思います。しかも売上が19%伸びる中で販管費の増加は7.8%に抑えられており、固定費のレバレッジも効いています。

特別な利益で嵩上げされた数字でもありません。 1Qの特別利益は固定資産売却益0百万円、特別損失は固定資産除却損2百万円のみ。本業だけで積み上げた増益です。

通期予想に対する進捗も良好です。

項目通期予想1Q進捗率(参考)前年同期の進捗率
売上高108,000百万円22.3%20.4%
営業利益9,400百万円29.9%16.6%
経常利益9,900百万円29.6%16.5%

前年の1Qは営業利益の進捗が16.6%しかなかったので、今年の29.9%は明らかに前倒しペースです。それでも会社は通期予想を据え置きました。

将来の売上のタネも積み上がっています。 1Q末の繰越工事高(受注済みでまだ完成していない工事)は66,043百万円と前年同期比+13.8%。工事種類別では、中期経営計画で強化を掲げる空調・管工事が+130.3%、電気・計装工事が+29.0%と伸びており、会社が目指す方向にきちんと進んでいる印象です。

気になった点

良いことばかり書いても仕方がないので、引っかかった点も正直に書きます。

1. 通期の純利益は「減益予想」です

今期の通期予想は、売上+8.6%、営業利益+6.5%と増収増益なのに、純利益だけは△12.0%の減益予想になっています。

理由は前期(2026年3月期)に投資有価証券の売却益という一時的な利益(約10億円)が乗っていたためで、本業が悪化するという話ではありません。とはいえ、配当性向は「純利益」に対して計算されるので、純利益が減れば配当性向は上がります。今期の配当性向60.2%という数字には、この事情も効いています。

2. 四国電力グループへの依存度は高い

1Qの受注高のうち49.5%、売上高のうち52.9%(いずれも個別ベース)が四国電力グループ向けです。長年の信頼関係に裏打ちされた安定収益源である一方、電力会社の設備投資計画が変われば、業績も動きます。安定と依存は表裏一体です。

なお、官公庁向けの受注は今回△29.1%と減少しました。四国の地域経済の縮小は、会社自身が経営課題として挙げている点でもあります。

3. 株価はすでに評価が進んだ水準

PBR(株価÷1株あたり純資産)は約1.35倍。会社が中期経営指針の資料で示していた2024年度末のPBRは0.94倍でしたから、この1年半ほどで大きく見直されたことになります。株価も52週安値1,234円に対し、現在は2,007円と高値圏です(※2026年7月31日終値時点)。

「万年PBR1倍割れの割安株を拾う」というスタンスで見る銘柄ではなくなってきた、というのが率直な印象です。

4. 人手不足という構造問題

受注環境が良くても、工事をこなす技術者がいなければ売上になりません。会社は中期経営指針2030で人的資本投資に200億円、新卒採用は年100人程度と掲げていますが、「技術者を育てるのには5~10年程度の期間を要する」と資料に明記しています。成長のボトルネックは受注ではなく施工力、という構図は当面続きそうです。

長期配当目線での評価

高配当株として見た場合の主要指標を整理します(※株価2,007円は2026年7月31日終値時点)。

指標数値計算式
配当利回り約4.19%84円 ÷ 2,007円
PER約14.4倍2,007円 ÷ 予想EPS 139.43円
PBR約1.35倍2,007円 ÷ BPS 1,491.4円
益回り約6.95%139.43円 ÷ 2,007円
時価総額約979億円2,007円 × 48,766,410株
DOE(予想)約5.63%84円 ÷ BPS 1,491.4円

財務は文句のつけようがありません。

  • 自己資本比率 72.7%(前期末68.4%からさらに上昇)
  • 現金預金169億円 − 有利子負債50億円 = ネットキャッシュ約119億円
  • さらに投資有価証券を127億円保有

借金より現金のほうがはるかに多い、いわゆる実質無借金です。しかも自己資本比率は2022年3月期の56.1%から5期連続で上昇しています。

配当は10年間、一度も減っていません。

分割・併合の影響を調整した1株あたり配当の推移を見てみます。

1株当たり年間配当の推移(分割・併合調整後/単位:円) 0 20 40 60 80 12.5 13.3 13.3 16.7 30.0 30.0 46.7 65.0 77.0 84.0 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 23/3 24/3 25/3 26/3 27/3 (予想) 出所:IR Bank掲載の配当実績(2017年10月の株式併合、2021年10月・2024年10月の株式分割を調整)

据え置きが2回(2020年3月期・2023年3月期)ありますが、減配は一度もありません。10年前と比べると配当は約6.7倍になっています。

そして今年、配当方針が変わりました。ここが一番の注目点です。

旧方針(〜2025年度)新方針(2026〜2030年度)
配当の目安連結配当性向 40%以上連結配当性向 60%程度
下支え一時的に減益になっても減配しないDOE 5.0%程度

配当性向の目安が40%以上から60%程度へ、大きく引き上げられました。財務が良すぎて自己資本が積み上がりすぎたので、ROE10%という目標に向けて「純資産の積み増しを抑制する」という、いわば意図的な高還元です。今期、純利益が減益予想にもかかわらず7円の増配になったのは、この新方針が実際に働いている証拠と言えます。

一方で、旧方針にあった「一時的に減益になっても減配しない」という一文は、新方針では姿を消しました。代わりに置かれたのが「DOE5.0%程度」です。

DOEとは「自己資本に対して何%を配当に回すか」という指標です。配当性向は利益(=年によってブレる)が分母ですが、DOEは自己資本(=簡単には減らない)が分母なので、業績が一時的に落ち込んでも配当が急に減りにくいという性質があります。

実際に計算してみると、1Q末の自己資本70,594百万円に対してDOE5.0%を当てはめた配当総額は約3,530百万円、1株あたりにすると約74.6円。今期予想の84円からは下がりますが、「利益が悪化しても70円台半ばは意識される」という下限のイメージが持てます。文言としての「減配しない宣言」は消えましたが、実質的な下支えはむしろ具体的になった、と私は受け止めています。

なお、自社株買いについては「株式の流動性を向上させる必要があるため、配当を中心とし、時期・手法を含め今後の検討課題」とされています。当面は配当一本の還元です。

五項目の採点表

評価項目点数寸評
収益力16/201Q営業利益+92.5%、営業利益率11.7%は設備工事業として高水準。ただし1Qは季節性があり通期での定着は要確認
割安性13/20PER14.4倍・益回り6.95%は妥当。PBR1.35倍は過去レンジ(2024年度末0.94倍)を大きく上回り、株価は高値圏
財務健全性18/20自己資本比率72.7%、ネットキャッシュ約119億円。時価総額979億円と流動性の低さのみ減点
株主還元17/20利回り4.19%、10年減配なし、DOE5.0%程度の下限設定。自社株買いは検討課題どまり
将来性・トレンド15/20中期経営指針2030(売上1,200億円・ROE10%)と送配電更新需要。四国経済の縮小と人手不足が制約
合計79/100
5項目評価レーダーチャート(合計79/100) 収益力 16 割安性 13 将来性 15 株主還元 17 財務健全性 18

総合判断

結論から言えば、「保有継続、新規は株価水準を見て」という整理になりました。

第1四半期としては、文句のつけようがない滑り出しです。営業利益が約1.9倍になっただけでなく、その中身が「工事の採算改善」という本業の実力によるものだった点が良かったと思います。繰越工事も+13.8%と積み上がっており、当面の売上の裏付けもあります。

財務に至っては、自己資本比率72.7%、ネットキャッシュ119億円。高配当株にありがちな「借金しながら配当を出している」タイプとは対極にあります。配当利回り4.19%(※2026年7月31日終値時点)で、10年減配なし、しかもDOE5%という下支えつき。長期でインカムを積み上げたい投資家にとって、選択肢に入る条件は揃っています。

一方で、慎重に見ておきたいのは株価です。PBRは1.35倍まで上がり、株価も52週高値圏。「財務が良く利回りが高いのに放置されている」という状態は、すでに解消されつつあります。ここから先は、中期経営指針2030が掲げる売上1,200億円・営業利益110億円という成長ストーリーを、実際の数字で示せるかどうかが問われる局面です。

私自身のチェックポイントは次の3つです。

  1. 2Q決算での通期予想の修正有無(1Qの利益進捗30%が本物なら、上方修正が視野に入ります)
  2. 中間配当42円が予定どおり実施されるか
  3. 下期の資機材価格・外注費の動向(今期の利益率改善が一時的なものでないかの試金石)

もちろん、最終的な投資判断はご自身の投資方針とリスク許容度に照らしてご検討ください。

この記事の補足コメント

  • 今回の分析には、2027年3月期1Q決算短信、2026年3月期決算短信、および2026年1月30日公表の「中期経営指針2030」を使用しています。決算補足説明資料は「作成の有無:有」となっていますが、今回は入手していないため、短信と経営指針をもとに整理しました。
  • 配当性向60.2%という数字だけを見ると「高すぎる」と感じるかもしれませんが、これは業績が悪化して結果的に上がった性向ではなく、資本効率を高めるために会社が意図的に引き上げたものです。性向の数字だけで持続性を判断すると、見誤ります。
  • 四半期のキャッシュ・フロー計算書は作成されないため、1Qのフリーキャッシュフローは算出できません。参考までに、前期(2026年3月期)通期の営業キャッシュ・フローは40.0億円、フリーキャッシュ・フローは約49.5億円でした。
  • 時価総額は約979億円。私が普段使っているスクリーニング条件の「1000億円以上」にはわずかに届いていません。出来高も1日あたり5〜13万株程度と、機動的に売買しづらい面はあります。

【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事は企業が公表した決算短信をもとに、筆者(ネコのシッポ)が独自の視点で分析・執筆したものです。。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
※ 本記事は特定の銘柄への投資を勧誘・推奨するものではありません。記事に記載された内容は、執筆時点での公開情報や個人的な見解に基づいています。
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