こんにちは、ネコのシッポです。
投資をしていると、不思議なことが起こります。頭では「冷静に」と分かっているのに、なぜか焦って売ってしまう。根拠もないのに「自分は大丈夫」と思い込んでしまう。そんな経験はありませんか。
実はこれ、あなたの性格や能力の問題ではありません。人間の脳に、もともと備わっている「考え方のクセ」が原因です。
このクセのことを、心理学では「認知バイアス」と呼びます。
かつて私は、この心のクセに気づかないまま、掲示板の空気に流されて判断を誤り、苦い思いをしました。だからこそ今日は、この認知バイアスについて、できるだけやさしくお伝えしたいと思います。
【結論】認知バイアスは「知っておくだけ」で対処できる
先に結論からお伝えします。
認知バイアスは、完全になくすことはできません。脳のクセだからです。
しかし、「自分にはこういうクセがある」と知っておくだけで、かなり対処しやすくなります。不必要に焦ることが減り、落ち着いて判断できるようになります。
これは、車の運転に少し似ています。運転には、どうしても見えない「死角」があります。死角そのものをなくすことはできません。でも、「ここに死角がある」と知っているドライバーは、自然とミラーを確認します。だから事故を防げるのです。
認知バイアスも同じです。 「ある」と知っているだけで、備えられる のです。
【理由】なぜ投資家は認知バイアスを知るべきなのか
では、なぜ投資家にとって、これがそんなに大切なのでしょうか。理由は大きく2つあります。
理由①:相場が動いても、不必要に焦らなくなる
投資で損をする原因の多くは、知識不足よりも「感情に振り回された判断」です。
価格が急に下がると不安になり、慌てて売る。価格が上がっていると、乗り遅れたくなくて飛びつく。こうした反応の裏には、たいてい認知バイアスが隠れています。
「あ、今のこの気持ちは、あのバイアスかもしれない」と気づけるようになると、ひと呼吸おけるようになります。この「ひと呼吸」が、冷静な判断を取り戻してくれます。
理由②:自分の判断のクセに、早めに気づける
人は、自分の思考のクセには、なかなか自分で気づけないものです。
しかし、バイアスの「名前」と「特徴」をあらかじめ知っておくと、話は変わります。同じ失敗を繰り返す前に、「またこのパターンに入りそうだ」と、早めにブレーキをかけられるようになります。
【具体例】知っておきたい7つの認知バイアスと対処法
ここからが本題です。投資家がとくに知っておきたい7つのバイアスを、ひとつずつ見ていきましょう。
それぞれ「どんなクセか」「投資でのありがちな例(たとえ話)」「対処法」の順でお伝えします。なお、例はすべて、特定の銘柄とは関係のない、分かりやすくするための架空のお話です。
① 損失回避バイアス:損は、得の約2倍つらい
どんなクセか
人は、得をする喜びよりも、損をする痛みのほうを、ずっと強く感じます。研究では、損の痛みは、同じ金額の得の喜びの、 約2倍 にもなると言われています(プロスペクト理論)。
同じ「1万円」でも、心に響く大きさは違う
1万円もらえた「うれしさ」
1万円失った「つらさ」
※ 痛みは喜びの約2倍と感じられる、というイメージ図です。
たとえ話
道で1万円を拾ったときの喜びと、財布から1万円を落としたときの悔しさ。どちらが心に長く残るでしょうか。多くの人は、後者のはずです。
投資でも同じことが起こります。利益が出ている株は「早く確定させたい」とすぐ売りたくなる一方、損が出ている株は「損を確定させたくない」気持ちから、ずるずる持ち続けてしまいがちです。
対処法
売買のルールを「買う前に」決めておくことです。
たとえば「この理由が崩れたら売る」というように、感情が動く前に、自分なりの基準を作っておきます。痛みを感じてから考え始めると、どうしても判断が鈍るからです。
② 確証バイアス:見たい情報だけが、目に入る
どんなクセか
人は、自分の考えを裏づける情報ばかりを集め、反対の情報を無視してしまう傾向があります。
たとえ話
ある会社の株を買ったあと、その会社を褒める記事ばかり読んでしまう。逆に、悪いニュースが出ても「これはたまたまだろう」と軽く流してしまう。応援したい気持ちが、知らないうちに目を曇らせるのです。
対処法
あえて「反対意見」を探しにいくことです。
自分が買った銘柄について、「弱気な見方」や「考えられるリスク」を意識して調べる習慣をつけます。反対意見を読んでも気持ちが揺るがないなら、それは納得して持てている証拠でもあります。
③ アンカリング:最初に見た数字に、引きずられる
どんなクセか
最初に見た数字が「基準(錨=いかり)」となって、その後の判断を引きずってしまうクセです。
たとえ話
ある株が、一時は3,000円まで上がったとします。それが2,000円まで下がると、「1,000円も安い、お買い得だ」と感じてしまいます。
でも、その会社の本当の実力が1,500円分しかないとしたら、2,000円はむしろ割高かもしれません。最初に見た「3,000円」という数字に、判断が引っぱられているのです。
対処法
過去の高値や、自分の買った値段を基準にしないことです。
大切なのは、「今のその会社の実力」、つまり業績や財務といった中身です。値札の動きではなく、中身を見る習慣をつけましょう。
④ 群集心理(バンドワゴン効果):みんなが買うから、買う
どんなクセか
みんながやっていることを「正しい」と感じ、つい同じ行動を取りたくなるクセです。
たとえ話
SNSで「この株、みんな買ってる!」と盛り上がっていると、乗り遅れたくなくて、よく調べないまま買ってしまう。行列のできるお店に、つい並びたくなるのと似ています。
正直に申し上げると、かつて私が掲示板の空気に飲まれて失敗したのも、まさにこのバイアスでした。
対処法
「なぜ自分はこれを買うのか」を、一度言葉にしてみることです。
その理由が「みんなが買っているから」しか出てこないなら、立ち止まるサインです。人の数は、その投資が正しいことの理由にはなりません。
⑤ 直近性バイアス:最近のことを、重く見すぎる
どんなクセか
最近起きた出来事を、実際以上に重く受け止めてしまうクセです。
たとえ話
ここ数日、株価が上がり続けると「これからもずっと上がりそうだ」と感じます。逆に数日下がると「もう終わりかもしれない」と感じます。
実際の相場は、上がったり下がったりを繰り返すものです。それなのに、つい「今の流れ」が永遠に続くように錯覚してしまうのです。
対処法
短い期間ではなく、長い期間(年単位)のグラフで見ることです。
数日の動きは「点」にすぎません。「点」ではなく「線」で全体を眺めると、今の動きが、長い流れの中のどのあたりなのかが見えてきます。
⑥ サンクコスト効果:「もったいない」から、やめられない
どんなクセか
すでに使ったお金や時間が「もったいない」と感じ、損だと分かっていてもやめられなくなるクセです。専門的には「埋没費用(サンクコスト)」と呼びます。
たとえ話
つまらない映画でも、お金を払って入ったからには、最後まで観てしまう。そんな経験はないでしょうか。
投資でも、「ここまで持ったのだから」「これだけ下がったのだから、戻るまで待とう」と、合理的でないのに持ち続けてしまうことがあります。
対処法
「もし今、この株を1株も持っていなかったとして、今の値段で新しく買うだろうか?」と自分に問いかけることです。
答えが「買わない」なら、それは手放すことを考えるべき候補かもしれません。すでに払ったお金は、もう戻ってきません。判断すべきは「これから」です。
⑦ 自信過剰バイアス:「自分だけは大丈夫」と思う
どんなクセか
自分の知識や判断を、実際よりも高く見積もってしまうクセです。「自分だけは失敗しない」と感じてしまいます。
たとえ話
何度か投資がうまくいくと、「自分にはセンスがあるのかもしれない」と感じ始めます。そして、だんだん大きな金額を、よく調べないまま投じるようになっていきます。
しかし、うまくいったのが「実力」だったのか、「たまたま(運)」だったのか。人は、この2つを区別するのがとても苦手です。
対処法
自分の判断や売買を「記録」しておくことです。
「なぜ買ったのか」「結果はどうだったのか」を簡単にメモしておくと、思い込みと現実のズレに気づけます。記録は、未来の自分への、いちばん正直なアドバイザーになってくれます。
| バイアス | どんなクセか | 対処法のヒント |
|---|---|---|
| ① 損失回避 | 損の痛みを、得の約2倍に感じる | 売る基準を、買う前に決めておく |
| ② 確証 | 都合のいい情報だけを集める | あえて反対意見・リスクを調べる |
| ③ アンカリング | 最初に見た数字に引きずられる | 値段でなく、今の実力で見る |
| ④ 群集心理 | みんなが買うから、自分も買う | 「買う理由」を言葉にしてみる |
| ⑤ 直近性 | 最近の出来事を重く見すぎる | 長い期間のグラフで眺める |
| ⑥ サンクコスト | もったいなくて手放せない | 「今、新しく買うか?」と問う |
| ⑦ 自信過剰 | 自分の判断を高く見積もる | 売買の理由と結果を記録する |
明日から使える、セルフチェックリスト
最後に、判断に迷ったときのチェックリストをご用意しました。何かを売買する前に、ひとつずつ確認してみてください。当てはまるものがあれば、いったん立ち止まる合図です。
売買する前の、7つの問いかけ
- ☐ その判断、「損したくない」気持ちが先に立っていませんか?
- ☐ 反対の意見やリスクも、ちゃんと調べましたか?
- ☐ 過去の値段ではなく、今の実力で見ていますか?
- ☐ 「みんなが買っているから」が、理由になっていませんか?
- ☐ ここ数日の動きだけで、判断していませんか?
- ☐ 「もったいない」だけで、持ち続けていませんか?
- ☐ 「自分は大丈夫」と、思い込んでいませんか?
【まとめ】バイアスは「敵」ではなく「付き合う相手」
最後に、もう一度お伝えします。
認知バイアスは、消すことができません。これは、誰の脳にもある、ごく自然なものです。ですから、バイアスを持っている自分を、責める必要はまったくありません。
大切なのは、完璧になることではありません。「あ、今これかもしれない」と気づける回数を、少しずつ増やしていくこと。それだけで、判断はずいぶん落ち着いてきます。
もちろん、バイアスを知ったからといって、投資のリスクがなくなるわけではありません。投資には、いつでも損をする可能性があります。バイアスへの理解は、あくまで「感情による余計な失敗」を減らすための備えです。利益を約束してくれるものではありません。ここは、冷静に受け止めておきたいところです。
それでも、自分の心のクセを知っておくことは、長く投資を続けていくうえで、きっと静かな支えになってくれます。
焦らず、長く、冷静に。一緒に、少しずつ学んでいきましょう。
【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事は情報の正確性を完全には保証するものではありません。正確な情報は必ず企業公式サイト等をご確認ください。
※ 本記事は特定の銘柄への投資を勧誘・推奨するものではありません。記事に記載された内容は、執筆時点での公開情報や個人的な見解に基づいています。
※ 投資にかかわる最終的なご判断は、必ずご自身の自己責任にて行われますようお願い申し上げます。本記事の利用により生じた損害等について、当ブログは一切の責任を負いません。


コメント