こんにちは、ネコのシッポです。
8月に入り、3月期決算企業の第1四半期発表が本格化してきました。今回は日本を代表する通信インフラ企業、NTT(9432)の2027年3月期・第1四半期決算を読み解いていきます。
決算の見出しだけを見ると「営業収益+10.9%、四半期として過去最高」と、なかなか勢いのある数字が並んでいます。ただ、投資判断の材料にするなら、その伸びが「どこから来たのか」を確かめておきたいところです。
今回は特に、増収率と増益率のギャップ、そして支払利息の増え方という2点に注目しながら、決算短信の数字を追いかけていきます。前回(2026年3月期通期)の分析からの変化も併せて見ていきましょう。
三行要約
- 営業収益3兆6,177億円(前年同期比+10.9%)で第1四半期として過去最高。営業利益4,251億円(+4.9%)、当期利益2,748億円(+5.8%)と増収増益で着地
- ただし営業利益率は12.4%→11.8%に低下。増収の相当部分は2025年度中に連結化した銀行業とM&Aによる押し上げで、既存事業の実力ベースの伸びはこれより穏やか。支払利息は前年同期比+53.4%
- 配当予想5.40円は据え置き、16期連続増配の方針を維持。予想配当利回り3.50%(※2026年8月6日終値154.5円時点)、配当性向44.6%。自己株買いも2,000億円枠のうち7月末で331億円を消化
今期の見どころ
「+10.9%増収」の中身を分解する
まず、今回の決算のいちばん目立つ数字から見ていきます。
| 項目 | 前年同期(2025年度1Q) | 今回(2026年度1Q) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 3兆2,620億円 | 3兆6,177億円 | +10.9% |
| EBITDA | 8,014億円 | 8,362億円 | +4.3% |
| 営業利益 | 4,052億円 | 4,251億円 | +4.9% |
| 当期利益 | 2,597億円 | 2,748億円 | +5.8% |
| 1株当たり利益(EPS) | 3.14円 | 3.38円 | +7.6% |
売上にあたる営業収益が10.9%も伸びているのに、営業利益は4.9%しか伸びていません。この差はどこから来たのでしょうか。
セグメント別に見ると、その正体が見えてきます。
注目すべきは、いちばん規模の大きい「総合ICT事業」で、収益+8.5%に対して利益が+2.7%しか伸びていない点です。
このセグメントはNTTドコモを中心とする事業ですが、2025年度の途中で銀行業(旧・住信SBIネット銀行、現在のドコモSMTBネット銀行)が連結に加わっています。決算短信のキャッシュフロー計算書を見ると、前年同期には「銀行業の貸出金」「銀行業の預金」の項目が存在せず、今回から新たに計上されています。つまり前年同期は銀行が入っていない数字なんですね。
銀行業は、預かるお金の規模(同行の資産は約13兆5,000億円)に対して利益はそれほど大きくないビジネスです。売上には大きく効くけれど、利益率は下がる。これが「収益は伸びたのに利益はあまり伸びない」構造の背景にあります。
一方、グローバル・ソリューション事業(NTTデータ中心)は収益+15.8%・利益+9.9%と、収益・利益ともに二桁近い伸び。5月に米国のWinWire(Microsoft Azure領域に強みを持つ企業)を子会社化するなど、M&Aによる拡大が続いています。
通期予想に対する進捗は順調
伸び率の中身に注意は必要ですが、通期計画に対する進み具合という点では順調です。
| 項目 | 1Q実績 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 3兆6,177億円 | 15兆600億円 | 24.0% |
| 営業利益 | 4,251億円 | 1兆7,100億円 | 24.9% |
| 当期利益 | 2,748億円 | 9,800億円 | 28.0% |
1年の4分の1が終わった時点なので、目安は25%。営業利益はほぼぴったり、当期利益は28.0%と目安を上回っています。通期予想は据え置かれましたが、これは第1四半期時点では珍しくない対応です。
そしてもうひとつ、地味ですが評価できる点があります。今回の増益に、大きな一過性要因が含まれていないことです。
前年度(2026年3月期)の通期決算では、データセンター資産をシンガポールのREITに売却した約1,295億円の売却益が利益を押し上げていました。今回の1Qには、そうした特殊要因は見当たりません(固定資産売却益は72億円と小規模)。本業の積み上げによる増益、と読んで差し支えなさそうです。
気になった点
①支払利息が前年同期比+53.4%
今回の決算で私がいちばん気になったのは、ここです。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 金融費用 | 493億円 | 711億円 | +44.3% |
| 支払利息(CF計算書) | 424億円 | 650億円 | +53.4% |
NTTデータグループの完全子会社化のために約2兆3,800億円を借り入れた影響が、いよいよ本格的に効いてきています。四半期で650億円ということは、単純に年換算すると2,600億円規模。これは決して小さな金額ではありません。
さらに、決算短信の「後発事象」欄に気になる記載があります。
2026年7月1日にNTTグループは、海外市場において発行総額55億米ドル、38.5億ユーロ及び4億英ポンドの無担保社債を発行しました。
6月末時点のバランスシートには、この社債は含まれていません。つまり、第2四半期以降の有利子負債と支払利息はさらに増える可能性が高いということです。
なお、今回の1Qについては、金融収益(銀行業の利息収入など)が236億円→438億円に増え、持分法による投資損益も122億円→235億円と倍増したため、金融費用の増加はほぼ相殺されました。結果として税引前利益は+7.6%と営業利益(+4.9%)を上回っています。この点は数字として押さえておきたいところです。
②有利子負債が3か月で+5,430億円
財務の状況も確認しておきましょう。
| 項目 | 2026年3月末 | 2026年6月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 有利子負債 | 15兆7,116億円 | 16兆2,546億円 | +5,430億円 |
| うち金融事業 | 1兆6,579億円 | 1兆4,516億円 | △2,063億円 |
| うちデータセンター事業 | 1兆8,481億円 | 1兆8,602億円 | +121億円 |
| うちその他(通信本体等) | 12兆2,056億円 | 12兆9,428億円 | +7,372億円 |
| 現金及び現金同等物 | 1兆9,219億円 | 2兆3,874億円 | +4,655億円 |
3か月で有利子負債が5,430億円増えています。しかも内訳を見ると、金融事業は減っているのに、通信本体を含む「その他」が7,372億円増加しています。
キャッシュフローを見ると構図がはっきりします。設備投資などの資産取得に6,243億円、配当の支払いに2,159億円を使い、これを短期借入(+1兆581億円)で賄っている形です。
とはいえ、株主資本は9兆7,276億円→9兆8,581億円と増えており、自己資本比率は20.8%で横ばい。BPS(1株当たり純資産)も119.47円→121.07円へと着実に増加しています。急激に悪化したわけではありません。
③「自己資本比率20.8%」の読み方(前回のおさらい)
前回の記事でも触れましたが、大事なポイントなので改めて。
NTTの自己資本比率20.8%という数字だけを見ると、「財務が弱い会社」に見えてしまいます。しかしこれは、銀行業を連結したことで顧客が預けた預金が「負債」として計上されていることが主因です。
今回の決算短信の数字で確認すると、こうなっています。
- 銀行業の預金(負債):11兆4,638億円
- 銀行業の貸出金(資産):11兆1,032億円
預金と貸出金がほぼ同じ規模で対応しているのが分かります。銀行というのは「預かったお金を貸す」のが本業ですから、当然といえば当然です。この部分は実質的に相殺関係にあり、一般的な借金とは性質が違います。
ただし、金融業特有のリスク(金利変動リスク・貸したお金が返ってこない信用リスク)がグループに加わったことは事実です。「見かけの数字ほど悪くない」と「まったく問題ない」は別の話なので、そこは分けて考えたいところです。
長期配当目線での評価
配当予想は据え置き、16期連続増配の方針は不変
高配当株として保有している方がいちばん気になるのは、ここでしょう。結論から言うと、配当予想に変更はありません。
| 項目 | 2025年度(実績) | 2026年度(予想) |
|---|---|---|
| 中間配当 | 2.65円 | 2.70円 |
| 期末配当 | 2.65円 | 2.70円 |
| 年間配当 | 5.30円 | 5.40円 |
| 配当性向 | 42.0% | 44.6% |
決算短信にも「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」と明記されています。年間5.40円が実現すれば、2011年度から数えて16期連続の増配となります。
配当の実績を分割調整後の数字で並べると、NTTの姿勢がよく分かります。
2012年3月期から2027年3月期予想まで、一度も減配も据え置きもありません。 リーマンショック後の混乱期も、コロナ禍も、通信料値下げ圧力の時期も、NTTは増配を続けてきました。これは口先の方針ではなく、実績として積み上がっているものです。
配当の「余裕度」は、どのくらいあるのか
ただ、実績が立派だからといって将来も安泰とは限りません。数字で余裕度を確認しておきましょう。
(1)配当性向は44.6%
利益のうち配当に回している割合が44.6%。半分以下ですから、利益が1割程度落ち込んでも増配を続けられる計算になります。
ただし推移を見ると、2023年度33.8%→2024年度43.5%→2025年度42.0%→2026年度予想44.6%と、じわじわ切り上がってきています。まだ余裕圏ですが、「余裕が年々薄くなっている」という方向感は認識しておきたいところです。
(2)配当を実際に払える現金があるか
今回の1Qで見ると、配当の支払いに2,159億円を使い、営業活動で稼いだ現金(営業CF)は5,745億円。配当は営業CFの37.6%で賄えている計算です。
一方、前年度の通期で見ると、フリーキャッシュフロー(本業で稼いだ現金から投資を差し引いた残り)は4,618億円。これに対して年間の配当総額は約4,400億円。ほぼ同じ規模です。
つまり「稼いだ現金で配当をぎりぎり賄っている」水準ということ。危険水域ではありませんが、余裕たっぷりというほどでもありません。
※なお、1Q単体のフリーキャッシュフローは△989億円のマイナスですが、これは設備投資が先行する第1四半期の季節性によるものです。前年同期も△819億円で、異常値ではありません。
(3)自己株買いも継続中
配当と並ぶもうひとつの還元策、自己株式取得も動いています。
2026年5月に2,000億円(上限)の取得を決議し、7月末時点で331億円を取得済み(進捗率16.6%)。取得期間は2027年3月末までです。
配当(約4,400億円)と自己株買い(2,000億円)を合わせると総還元額は約6,400億円。通期予想の当期利益9,800億円に対して、総還元性向は約65%になります。稼いだ利益の3分の2近くを株主に返している計算で、大型株としてはかなり手厚い部類です。
増配継続の「実質的な条件」
ここまでの数字を整理すると、NTTの増配が今後も続くかどうかは、シンプルな条件に集約されます。
利益の成長が、借入コストの増加を上回り続けられるか。
支払利息は前年同期比+53.4%のペースで増えています。7月には大型の社債発行もありました。この負担を、事業の成長で吸収できるかどうか。ここが分岐点になります。
今回の1Qは、当期利益+5.8%と、増える利息を上回る利益成長を確保できました。まずは合格点です。次の四半期以降も、この関係が維持できるかを見ていきたいところです。
筆者の保有状況と投資判断
NTTは、私が実際に保有している銘柄の一つです。NISA口座で、2023年の株式分割よりも前から持ち続けています。「NISAの長期枠に置いておく安定大企業」という位置づけで購入し、IOWN構想への期待もありました。ただ正直なところ、ここ数年の低調ぶりにはがっかりさせられてきたというのが本音です。売却を考えるほどではありませんが、期待したほどの果実は得られていません。
その点、今回の決算は見出しの数字が素直に良く、場中の発表に対して株価がきちんと反応してくれたのは、株主として素直に嬉しいものでした。
今後は買い増しをせず、このまま保有を継続します。目安としていた株数にはすでに到達しており、これ以上増やす予定はありません。仮に未達であれば150円割れは買い増しを検討する水準ですが、154.5円という現在の株価では見送りです。
ポートフォリオ上は通信セクターの枠。ソフトバンクも保有していますが優待目的の100株のみですので、実質的にこのセクターを担っているのはNTTです。主力というより、約30銘柄による分散保有の一角、という感覚です。
五項目の採点表
| 評価軸 | 得点(/20点) | 前回 | 一言コメント |
|---|---|---|---|
| 収益力 | 17点 | 17点 → 変化なし | 1Q営業収益は過去最高、進捗率も計画線上。一過性要因なしの増益は評価できるが、営業利益率は0.67pt低下 |
| 割安性 | 14点 | 14点 → 変化なし | 予想PER12.77倍・PBR1.28倍は通信株として標準的。利回り3.50%は魅力だが、株価上昇でやや低下 |
| 財務健全性 | 11点 | 11点 → 変化なし | 自己資本比率20.8%は横ばい、株主資本は増加。ただし有利子負債+5,430億円、支払利息+53.4%と圧力は継続 |
| 株主還元 | 18点 | 18点 → 変化なし | 配当予想据え置きで16期連続増配へ。自己株買い2,000億円枠も進行中。総還元性向約65% |
| 将来性・トレンド | 15点 | 14点 → +1点 | IOWNの海外実証、分散GPU環境の提供開始、光量子コンピューターへの出資など、中期戦略の実装が動き出した |
| 合計 | 75点/100点 | 74点 → +1点 |
前回(2026年3月期通期)からの変化について
3か月前の通期決算分析では74点でしたので、ほぼ横ばいの75点という評価になりました。四半期決算ひとつで企業の構造が大きく変わることはない、というのが正直なところです。
唯一プラス評価としたのは将来性・トレンドの14点→15点です。
前回は「中期EBITDA目標4兆円の達成時期を2027年度から2030年度へ3年延期」という失望材料が重く、成長シナリオの具体性に欠ける印象がありました。今回の決算説明資料では、IOWN(次世代通信基盤)のチリ銅鉱山・インドでの海外実証、全国8拠点を結ぶ分散GPU実証環境「GPU over APN Testbed」の提供開始、光量子コンピューターを手がけるOptQCとの資本業務提携など、具体的な施策が並びました。
まだ収益への貢献段階ではありませんが、構想が実装フェーズに入ってきた点は、ささやかですが前進と受け止めています。
一方で、財務健全性の11点は据え置きです。支払利息の急増と有利子負債の積み上がりを見る限り、改善の兆しは見えていません。ここは次の四半期以降も継続して確認していく項目です。
総合判断
「保有継続。配当目的なら安心して持てるが、財務指標の改善はまだ確認できていない」というのが今回の私の判断です。
今回の第1四半期は、良くも悪くもサプライズのない決算でした。増収増益で通期計画に対する進捗も順調、配当予想も据え置きで16期連続増配の方針に変更なし。高配当・連続増配というインカム目的の保有理由は、今回の決算でも損なわれていません。
予想配当利回り3.50%、配当性向44.6%、16期連続増配の実績。この3つが揃う大型株は日本市場でも数えるほどしかありません。長期保有の柱としての位置づけは変わらないと考えています。
一方、新規の買い増しについては、もう少し数字の改善を待ちたいというのが率直なところです。理由は3点。
- 増収率+10.9%の相当部分が、銀行業の連結化とM&Aによる押し上げであること
- 支払利息が前年同期比+53.4%と増加し、7月の大型社債発行でさらに増える見込みであること
- 有利子負債/EBITDA約4.3倍が改善しておらず、2030年度目標の3.5倍まで距離があること
株価154.5円(※2026年8月6日終値時点)での予想PERは12.77倍。3か月前(150.2円時点)の12.41倍からわずかに切り上がっており、明確な割安感はありません。
「配当を受け取りながら、財務の改善を待つ」——今のNTTは、そういう付き合い方が合う銘柄だと感じています。
この記事の補足コメント
今回いちばん時間をかけて見たのは、支払利息の欄でした。424億円→650億円という増え方は、率にすると+53.4%。四半期でこれだけ増えると、年間では2,600億円規模になります。年間の配当総額が約4,400億円ですから、その6割近い金額を利息に払っている計算です。
もちろん、それを上回るキャッシュを稼いでいるから配当が続いているわけですが、「借金で成長を買った」ことのコストが、こうして毎四半期のP/Lに現れ続けるという事実は、数字で見ると改めて重く感じます。
もうひとつ、決算資料を読んでいて印象に残ったのが、令和8年熊本地震への対応です。最大2市町村でモバイルサービスが中断したものの約2日で復旧、他社のネットワークを一時的に借りる「JAPANローミング」の迅速な運用、避難所92拠点への支援——業績には直接現れない部分ですが、通信インフラ企業として何をやっている会社なのかがよく分かる内容でした。
数字で見る顔と、社会インフラとしての顔。NTTという会社は、その両方を見ないと評価を誤る気がしています。
【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事は企業が公表した決算短信をもとに、筆者(ネコのシッポ)が独自の視点で分析・執筆したものです。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
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