こんにちは、ネコのシッポです。
前回(2026年3月期通期)の分析で、私は「住信SBIネット銀行の売却益1,416億円という一過性の特殊益が消えた後の“実力値”が問われる」と書きました。その答え合わせとなる2027年3月期の第1四半期決算が、2026年7月31日に発表されました。
結論から言うと、SBIホールディングスは大型の特殊益がない状態でも税引前利益+149.9%・1Q過去最高という強い数字を出してきました。市場もこれを好感し、株価は当日+7.5%の急騰。ただ、その中身をよく見ると、手放しでは喜べない「ある偏り」も見えてきます。今回は一次資料をもとに、その中身を冷静に見ていきます。
三行要約
- 収益・税引前利益・親会社帰属利益のすべてが第1四半期として過去最高。親会社帰属四半期利益は前年同期比+75.0%の1,481億円、年換算ROEは約29%という高水準です。
- 前期の懸念だった「特殊益消失後の実力」に対し、特殊益なしでも税引前利益+149.9%と好回答。ただし増益の約半分はPE投資事業の評価益(保有株式の時価上昇による含み益)で、市場次第で振れやすい点には注意が必要です。
- 株主還元では中間配当を前年同期比+10円増の30円へ早期決定。年間は前期と同じ95円以上を目指すと明言しましたが、期末・年間配当は業績連動で現時点は未定です。
今期の見どころ
「特殊益なし」での1Q過去最高
前回の通期決算は、利益の3分の1が住信SBIネット銀行の売却益という一過性要因でした。「では、それが消えたら実力はどうなの?」というのが最大の論点だったわけですが、今回の1Qはこの問いに前向きな答えを出しました。
| 指標 | 2026年3月期1Q | 2027年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 収益(売上高) | 4,432億円 | 5,710億円 | +28.8% |
| 税引前利益 | 904億円 | 2,258億円 | +149.9% |
| 親会社帰属四半期利益 | 846億円 | 1,481億円 | +75.0% |
| EPS(1株利益) | 139.60円 | 229.07円 | +64.1% |
| 年換算ROE | ─ | 約29% | ─ |
今回は前期のような大型売却益はありません。それでも税引前利益は2.5倍に膨らみました。さらに、この税引前利益2,258億円は、同じ日までに決算を開示した野村HD(2,115億円)を上回る水準で、主要証券グループの中では首位に立っています。
増益のエンジンは「金融サービス本業」と「PE投資の評価益」
では、何がここまで利益を押し上げたのか。セグメント別に見ると一目瞭然です。
| セグメント | 税引前利益(前1Q → 当1Q) | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 金融サービス事業 | 727億円 → 1,160億円 | +59.5% |
| PE投資事業 | 280億円 → 1,199億円 | +328.0% |
| 資産運用事業 | 13億円 → 27億円 | +103.6% |
| 次世代事業 | 10億円 → 36億円 | +262.5% |
| 暗号資産事業 | ▲5億円 → ▲14億円 | 赤字拡大 |
グラフのオレンジ色に注目してください。PE投資事業(280億円→1,199億円)だけで、連結の増益額(+1,354億円)の約7割を稼いでいます。これは「複数の投資先企業の株価上昇による評価益(=含み益)」が主因です。金融サービス本業も+59.5%としっかり伸びていますが、増益のインパクトという意味ではPE投資事業の存在感が突出しています。この点は次章で詳しく触れます。
中間配当を「早期に」+10円増額
株主還元の面では、うれしいニュースがありました。今期の中間配当を前年同期比+10円増の1株30円に、この1Q時点で早期決定したのです。前回の通期決算では「来期配当は未定」でしたから、増配方針を前倒しで示したのは前向きなサインといえます。年間配当についても「前期実績(95円)以上の水準を目指す」と明言しています。
気になった点
①増益の約半分は「評価益」=変動が大きい
今回いちばん冷静に見ておきたいのがここです。税引前利益2,258億円のうち、PE投資事業が1,199億円(全体の約53%)を占めています。そしてこのPE投資事業の利益の主因は「保有株式の時価が上がったことによる評価益(含み益)」です。
評価益は、実際に売って得た現金ではなく、あくまで「時価で計算し直したらこれだけ増えていました」という会計上の利益です。株式市場が下落すれば、逆に評価損に転じることもあります。実際、前期通期ではPE投資事業の税引前利益は▲13.9%とマイナスでした。四半期ごとのブレがとても大きいのです。
1Qが絶好調だから通期も4倍で計算…は危険。PE投資事業の評価益は市場次第で大きく動くため、単純な年換算はあてになりません。
②業績予想・年間配当が「非開示」
SBIホールディングスは、金融事業は市場変動の影響が大きいという理由で、例年どおり通期の業績予想を開示していません。中間配当30円は確定しましたが、期末配当・年間配当は「通期の業績を見て決める」として未定のままです。
高配当投資家にとって「年間でいくらもらえるか、まだ確定していない」という状況は、どうしても不透明感が残ります。年間配当の正式な決定は、中間決算のタイミングを待つ必要があります。
③表面PERの「割安」に飛びつかない
株価3,038円で計算すると、PER(過去12ヶ月ベース)は約4.0倍、PBRは約1.05倍です(※2026年7月31日終値時点)。数字だけ見ると「激安」に見えます。
しかし、この過去12ヶ月の利益には前期の住信SBIネット銀行売却益が、直近1QにはPE投資事業の評価益が、それぞれ含まれています。こうした特殊要因・評価益を除いた「実力ベース」で見ると、実質的なPERはもっと高くなります。表面上の低PERだけを根拠に割安と判断するのは避けたいところです。
④暗号資産事業は2期連続の赤字
伸びているセグメントが多い中で、暗号資産事業は税引前で▲14億円と、前年同期(▲5億円)から赤字が拡大しています。収益自体は+25.9%と伸びているものの、コストが先行している状況です。暗号資産の相場や規制動向の影響を直接受けるセグメントであり、今後の黒字化の道筋は注視ポイントです。
長期配当目線での評価
中間配当の早期増額はポジティブ
長期の配当投資家としてまず評価したいのは、1Q時点で中間配当を+10円増額決定した「姿勢」です。前期は通期決算の時点で来期配当が未定でしたから、それと比べると経営陣の増配意欲がより明確に示されたといえます。
配当の歴史(2016年〜現在)
| 年度 | 年間配当(分割調整後) | 増減 | 特記 |
|---|---|---|---|
| 2016年3月期 | 17.5円 | ─ | ─ |
| 2017年3月期 | 25.0円 | +7.5円 | ─ |
| 2018年3月期 | 22.5円 | ▲2.5円 | 減配実績(過去10年で1回のみ) |
| 2019年3月期 | 50.0円 | +27.5円 | 創業20周年記念含む |
| 2020年3月期 | 50.0円 | 据え置き | ─ |
| 2021年3月期 | 60.0円 | +10円 | ─ |
| 2022年3月期 | 75.0円 | +15円 | ─ |
| 2023年3月期 | 75.0円 | 据え置き | ─ |
| 2024年3月期 | 80.0円 | +5円 | 創業25周年記念含む |
| 2025年3月期 | 85.0円 | +5円 | ─ |
| 2026年3月期 | 95.0円 | +10円 | ─ |
| 2027年3月期 | 95円以上を目指す(未定) | ─ | 中間30円は確定 |
2018年に一度だけ減配(▲2.5円)がありますが、2019年以降は増配・据え置き基調が続いており、実質的に連続増配に近い安定した姿勢を示しています。ただし「累進配当(減配しないという約束)」の明示はなく、配当方針は収益に連動する設計です。市場が大きく崩れた局面では、還元が縮小するリスクも頭の片隅に置いておく必要があります。
利回りとスクリーニング
前期実績の95円をベースにすると、配当利回りは3.13%(※2026年7月31日終値3,038円時点)。高配当株の目安である「利回り3%以上」はクリアしています。ただし、これは「前期並みの95円が出れば」という前提の数字である点にはご留意ください。
SBIホールディングスは、銀行・証券・保険・PE投資・暗号資産・次世代(バイオ・Web3)まで束ねた金融コングロマリット(総合金融グループ)です。株主優待の暗号資産(XRP)も含めた総合的な還元水準は引き続き高いといえます。
五項目の採点表
| 評価軸 | 点数(20点満点) | コメント |
|---|---|---|
| 収益力 | 18点 | 収益・税引前利益・親会社帰属利益すべて1Q過去最高。特殊益なしで税引前+149.9%は高評価。ただし増益の約半分がPE投資の評価益(変動大)である点を割り引く |
| 割安性 | 14点 | 表面PER約4.0倍・PBR1.05倍。前回から株価は下落しつつ本業利益は増加し割安感はやや増したが、特殊要因・評価益を除いた実力PERは上がる点で据え置き(前回13点→14点) |
| 財務健全性 | 14点 | 金融持株会社として資本水準は適切。親会社帰属持分比率4.8%へ改善。時価総額約2兆円。継続企業注記なし |
| 株主還元 | 15点 | 中間配当を1Q時点で+10円早期増額決定・年間95円以上を明言した点を加点。利回り3.13%。ただし期末・年間未定、2018年減配実績、累進配当の明示なしは据え置き要素(前回14点→15点) |
| 将来性・トレンド | 17点 | AI×金融・オンチェーン金融・資産運用強化など成長戦略は明確。次世代事業の黒字定着。税引前利益で野村HDを上回り主要証券グループ首位 |
| 合計 | 78点/100点 | 前回76点から+2点 |
前回(通期76点)からは株主還元(+1点)と割安性(+1点)が上がり、合計78点となりました。中間配当の早期増額決定という前向きな材料と、株価が下がりつつ本業利益が伸びたことによる割安感の小幅な改善を反映しています。
総合判断
判断:保有継続(+本業とPE投資の中身を注視)
今回の1Qで、前回いちばんの心配だった「特殊益が消えた後の実力」が、ひとまず前向きに確認できました。金融サービス本業が+59.5%と底堅く伸び、連結でも1Q過去最高を更新。加えて中間配当の早期増額決定という株主還元の前進もありました。ここは素直に評価できるポイントです。
一方で、高配当投資の目線で「安心して持ち続けられるか」を考えると、次の3点は引き続き見ておきたいところです。
- PE投資事業のブレ:今回の増益の約半分は評価益(含み益)です。市場が崩れれば評価損に転じ得るため、この事業に依存した好業績がどこまで続くかは要観察です。
- 年間配当の正式決定:中間30円は確定しましたが、期末・年間は未定。中間決算での年間配当の正式化が、次の株価材料になります。
- 本業(金融サービス事業)の継続成長:評価益を除いた「地力」の部分が今後も伸びていくかどうか。
株価3,038円での利回り3.13%は、高配当株の目安をクリアする水準です(※2026年7月31日終値時点)。ただし決算当日に+7.5%上昇しており、好決算を一定織り込んだ後の水準である点は意識しておきたいところ。本業の進捗とPE投資のブレ、そして中間決算での年間配当決定を確認しながら、焦らず保有を続けるスタンスが、私自身の考える堅実な向き合い方かなと思っています。
この記事の補足コメント
- 株価・配当利回りなどの指標は2026年7月31日(金曜日)終値3,038円時点のデータを使用しています。決算発表当日で、前日比+7.5%の急騰となりました。
- EPSおよび配当額は2025年12月1日実施の株式分割(1株→2株)後に調整した数値で記載しています。
- SBIホールディングスは業績予想を非開示のため、会社予想EPSが存在しません。本記事のPERは「過去12ヶ月実績」「1Q年換算」の参考値であり、いずれも特殊要因・評価益を含む点にご注意ください。
- 金融持株会社の性質上、「自己資本比率」「ネットキャッシュ」などの指標は一般事業会社と単純比較できません。銀行業では顧客預金が「負債」として計上されるため、「ネットデット」が必ずしも財務の不健全性を意味するわけではありません。
- 配当履歴データはIRバンク(irbank.net)(2026年7月31日取得)を参照しました。
【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事は企業が公表した決算短信をもとに、筆者(ネコのシッポ)が独自の視点で分析・執筆したものです。。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
※ 本記事は特定の銘柄への投資を勧誘・推奨するものではありません。記事に記載された内容は、執筆時点での公開情報や個人的な見解に基づいています。
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