【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループ 2027年3月期1Q決算分析:1Q過去最高益、それでも点数が下がった理由

高配当銘柄の分析

こんにちは、ネコのシッポです。

8月に入り、3月期決算企業の第1四半期決算が続々と出てきました。今回は8306、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)の2027年3月期第1四半期決算です。

結論から言うと、中身は文句のつけようがない決算でした。純利益は第1四半期として過去最高、通期目標に対する進捗率も30%。日銀の利上げが本格的に利ざやへ効き始めた、という手応えのある数字が並んでいます。

ただ、私の採点は前回(2026年3月期通期)の80点から79点へ1点下がりました。理由は業績ではなく、株価です。決算そのものと、投資対象としての魅力は別物——今回はそのあたりを丁寧に見ていきたいと思います。


三行要約

  • 親会社株主純利益8,094億円(前年同期比+48.2%)、第1四半期として過去最高益を更新。通期目標2兆7,000億円に対し進捗率30%
  • 円金利上昇で国内貸出金利回りが1.06%→1.45%へ。経費率も60.0%→53.4%と大幅改善
  • ただし株価上昇でPBRは1.769倍と2010年以降のレンジ上限(1.56倍)を突破、配当利回りは2.69%まで低下(※2026年8月3日終値3,567円時点)。総合スコアは79点/100点

今期の見どころ

① ついに来た「金利で稼ぐ」フェーズ

今回の決算で最も注目すべきは、資金利益が8,823億円(前年同期比+1,916億円、+27.7%)まで伸びたことです。

資金利益というのは、ざっくり言えば「お金を貸して受け取る利息」から「預金者に払う利息」を引いた、銀行の一番の本業です。この数字が2割以上伸びたのは、日銀の利上げがそのまま利ざや(貸出と預金の利率差)の拡大につながったからです。

具体的な数字を見ると分かりやすいと思います。

項目(国内業務部門・2行合算)前年1Q今1Q変化
貸出金利回1.06%1.45%+0.39ポイント
預金等利回0.17%0.30%+0.13ポイント
預貸金利回差0.89%1.14%+0.25ポイント

貸出金利は0.39ポイント上がったのに、預金金利は0.13ポイントしか上がっていない。この差が、そのまま銀行の利益になります。

ここで大事なのは、これが一過性ではないことです。日銀の政策金利が高止まりする限り、この利ざやは維持されます。しかも貸出残高そのものも135.7兆円(3月末比+0.5兆円)と増えているので、「利率×残高」の両方が伸びている状態です。

② 経費率が53.4%まで低下——稼ぎの伸びが費用の伸びを上回った

もう一つ地味ですが重要なのが、経費率が60.0%から53.4%へ6.6ポイント改善したことです。

経費率とは「稼いだ粗利益のうち、何%が経費に消えたか」を示す数字です。低いほど効率がいいということになります。

営業費そのものは8,154億円→9,270億円と1,116億円増えています。インフレの影響、成長投資、サイバーセキュリティ対応などで費用は膨らんでいる。それでも経費率が改善したのは、粗利益の伸び(+3,776億円)が費用の伸びを大きく上回ったからです。

これは「規模の経済が効いている」状態で、収益が伸びる局面では利益が加速度的に増えます。実際、粗利益+27.8%に対して業務純益は+49.0%と、より大きく伸びました。

③ 部門別で見ると、稼ぎ頭は「市場」——ここが少し引っかかる

事業本部別の営業純益を並べてみます。

事業本部前年1Q今1Q増減
リテール・デジタル640億円820億円+180億円
法人・ウェルスマネジメント851億円1,306億円+455億円
コーポレートバンキング1,311億円1,743億円+432億円
グローバルCIB813億円1,216億円+403億円
グローバルコマーシャル(海外商業銀行)704億円732億円+28億円
受託財産342億円378億円+36億円
市場926億円1,959億円+1,033億円

顧客と向き合う6部門の合計でも+2,058億円と、十分すぎる伸びです。裾野が広いのは素直に良い決算だと思います。

ただ、単体で最も伸びたのは市場事業本部の+1,033億円。中でも「トレジャリー」という、銀行が自己資金で債券や為替を運用する部門が598億円→1,560億円と2.6倍になっています。

ここは金利・為替・債券市況次第で大きく振れる部門です。今回の1Qは環境が良かった、という側面が大きい。ここは後の「気になった点」でもう少し詳しく触れます。


気になった点

① 進捗率30%なのに、会社は通期目標を上げなかった

通期の純利益目標2兆7,000億円に対して、1Qで8,094億円。単純計算で進捗率30%です。4分の1(25%)を明確に上回っています。

普通なら「上方修正あるか?」と期待したくなるところですが、会社は目標を据え置きました(2026年5月15日公表値から変更なし)。

これは経営側が「今回の数字には環境要因が乗っている」と認識している表れだと私は読んでいます。実際、純利益の増加分2,633億円の内訳を分解すると、こうなります。

増益要因(税後・概数)金額
業務純益の増加+1,820億円
持分法投資損益(Morgan Stanleyなど)+1,040億円
株式等関係損益(政策保有株の売却益)+470億円
与信関係費用▲170億円
その他(前年の子会社清算益の反動など)▲520億円
合計+2,633億円

さらに会社資料によれば、このうち為替の影響が約+500億円含まれています。ドル円が前年6月末の144.81円から162.39円へ、17円以上も円安に振れたことによる押し上げです。

円安と、市場部門の好調と、政策保有株の売却益。この3つは、環境が変われば逆回転する性質のものです。「8,094億円 × 4 = 3.2兆円」という計算をしてはいけない決算、というのが私の見方です。

② 配当利回りが3%を割り込んだ

そして、これが今回スコアを下げた最大の理由です。

前回の分析時(2026年5月16日、株価2,929円)、MUFGの予想配当利回りは3.28%でした。それが今回は——

  • 株価:3,567円(※2026年8月3日終値時点)
  • 予想配当:96円(据え置き、修正なし)
  • 配当利回り:2.69%

配当は減っていません。むしろ96円は過去最高です。株価の上がるスピードが、増配のスピードを上回った結果、利回りが下がったということです。3か月弱で株価は21.8%上昇しました。

さらに気になるのがPBRです。

指標現在2010年以降のレンジ位置
PER14.87倍4.59〜25.44倍中位〜やや高め
PBR1.769倍0.28〜1.56倍レンジ上限を超過

(レンジはIR Bank調べ、2010年〜2026年)

PBR1.77倍というのは、過去16年間で一度も到達したことのない水準です。数年前のメガバンクがPBR0.4〜0.5倍で放置されていたことを思うと、隔世の感があります。

業績が変わったのだから評価が変わるのは当然、という考え方も成り立ちます。ただ、「過去レンジの外側にいる」という事実は、頭の片隅に置いておくべきだと思います。

③ 見えなかった数字:CET1比率

前回の決算では、自己資本の厚みを示すCET1比率が9.2%と、中期経営計画のターゲットレンジ(9.5〜10.5%)を下回っていました。インドのShriram Financeへの出資が主因です。

今回、その後どうなったかを確認しようとしたのですが——1Qの開示資料(決算短信・決算ハイライト)にCET1比率の記載がありませんでした

四半期で8,094億円の利益が積み上がっているので改善しているはずですが、確認できないものは確認できない。ここは中間決算(2026年11月頃)を待つしかありません。

④ 海外商業銀行(GCB)は依然として弱い

好調な部門が並ぶ中で、海外商業銀行部門だけは営業純益+28億円と伸び悩みました。

  • タイのクルンシィ(KS):粗利益+83億円に対して経費+62億円。経費率は49%→51%と悪化し、当期純利益は205億円→185億円と減益
  • インドネシアのダナモン銀行(BDI):粗利益+75億円、当期純利益58億円→86億円と改善
  • 豪州の運用会社First Sentier Group:業務純益22億円(前年比▲21億円)と苦戦

アジア戦略はMUFGの成長ドライバーの一つとして位置づけられていますが、現状は「まだ結果が出ていない」状態が続いています。


長期配当目線での評価

高配当株投資で本当に大事なのは、「今いくらもらえるか」より「これからも払い続けてもらえるか」です。その観点でMUFGを見ていきます。

17年間、一度も減配していない

IR Bankで配当実績をさかのぼると、驚くべき事実が見えてきます。

MUFGの年間配当推移(円)※各年3月期 0 25 50 75 100 12 2012 16 2014 18 2016 19 2018 22 2019 25 2021 28 2022 32 2023 41 2024 64 2025 86 2026 96 2027予 実績 会社予想

2010年3月期以降の17年間、MUFGは一度も減配していません

据え置きの年は5回(2011・2012・2016・2017・2021年3月期)ありました。特にコロナ禍の2021年3月期は25円で据え置きです。それでも、下げなかった。この一点は長期保有者にとって非常に大きな安心材料だと思います。

そして2022年3月期からは6期連続で増配中。28→32→41→64→86→96円(予想)と、直近の増配ペースはかなり速いです。

配当性向40%は「余裕がある」水準

年度(3月期)年間配当配当性向総還元性向
2023年32円35.3%75.6%
2024年41円32.9%59.7%
2025年64円40.0%62.5%
2026年86円40.3%60.9%
2027年(予想)96円40.0%

配当性向とは「稼いだ利益のうち、何%を配当に回したか」です。MUFGは中期経営計画で「配当性向40%程度」と明記していて、直近3期はぴったりその通りに着地しています。方針と実績が一致している企業は信頼できます。

そして40%というのは、余裕のある水準です。仮に利益が2割下振れしても、配当性向を50%まで引き上げれば96円は維持できる計算になります(純利益2兆1,600億円まで対応可能)。減配リスクという意味では、かなり低いと判断していいと思います。

自己株買いも継続中

配当以外の還元も止まっていません。今回の1Qで自己株式が3,184万株(約998億円相当)増えました。これは前期に決議された「2026年度上期1,000億円」の枠を、1Qでほぼ使い切ったということです。

総還元性向(配当+自己株買い÷純利益)は3期連続で60%前後。稼いだ利益の6割を株主に返し続けている計算になります。

では、今の利回りをどう考えるか

問題は、これだけ配当が立派でも、株価が上がれば利回りは下がるということです。

  • 現在の予想配当利回り:2.69%(※2026年8月3日終値3,567円時点)
  • 2026年3月期の実績利回り:3.31%
  • 2020年3月期の実績利回り:6.2%

私が新規で買う場合の目安である「配当利回り3%以上」を当てはめると、株価3,200円以下(96円 ÷ 0.03)が計算上のラインになります。今の株価はそこから11%ほど上にいます。

もちろん来期以降さらに増配すれば利回りは回復します。仮に来期110円まで増配されれば、3,567円のままでも利回りは3.08%です。「配当の成長を待つ」という考え方も十分ありだと思います。


保有状況と投資判断

MUFGは私が実際に保有している銘柄の一つです。

購入したのは新NISAが始まる前年。当時のメガバンクはまだPBR1倍を大きく下回る水準で、配当利回りも十分に高かった。「メガバンクは1銘柄持っておきたい」と考えていた中で、単元購入価格が3行の中で最も手頃だったMUFGを選びました。新NISA開始時に特定口座から売却してNISA枠で買い直し、現在もNISA口座で保有しています。

買った当時は「メガバンク枠の1銘柄」くらいの位置づけでしたが、そこから株価は大きく上昇し、今では私の約30銘柄のポートフォリオの中で主力の一つに成長しました。結果的に、割安な時期に拾えたのは良かったと思います。

今回の1Q決算は、正直なところ思っていた以上に強い内容でした。資金利益の伸び方、経費率の改善、1Qとしての過去最高益——数字に文句はありません。ただ、これだけの好決算でも通期目標の修正や追加還元のアナウンスがなかったのは少し残念でした。まぁ1Qの段階で上方修正を出す方が珍しいので、中間決算に期待というところです。

現時点での判断は、ホールド継続。買い増しの予定はありません。

理由はシンプルで、配当利回りが2.69%と私の基準である3%を下回っているからです。今の株価で追加するより、もしメガバンク全体が調整する局面が来るなら、現在未保有の三井住友フィナンシャルグループ(8316)の方を新規で検討したいと考えています。同じセクターに資金を追加するなら、分散の観点からも別の銘柄を持つ方が合理的だと思うからです。


五項目の採点表

評価軸スコア(/20)前回比一言コメント
収益力19+11Q過去最高益、業務純益+49.0%、経費率53.4%、ROE14.4%
割安性10▲3PBR1.769倍は過去16年のレンジ上限超え、利回り2.69%は3%割れ
財務健全性15+1不良債権比率0.80%へ改善。CET1比率は1Q未開示で確認できず
株主還元18±017年減配ゼロ・6期連続増配・総還元性向60%前後を維持
将来性・トレンド17±0金利上昇の取り込みが本格化。次期中計は未開示、GCBは伸び悩み
合計79点▲1
5項目評価レーダーチャート(合計79/100) 収益力 19 割安性 10 将来性 17 株主還元 18 財務健全性 15 実線=今回(2027年3月期1Q・79点)/点線=前回(2026年3月期通期・80点)

前回(2026年3月期通期)は80点でした。今回は79点で1点減です。

チャートを見ていただくと分かりやすいのですが、上(収益力)と左(財務健全性)は前回より外側に広がっているのに、右上(割安性)だけが大きく内側に引っ込んでいます

これがまさに、今のMUFGの状況をそのまま表しています。会社は良くなっている。でも、その良さが株価に織り込まれた分だけ、投資対象としての「お買い得さ」は減っている。決算内容と投資判断は別物、というのはこういうことなんだと思います。


総合判断

スコア:79点/100点

結論としては、保有継続。新規の買い増しは慎重に、というのが私の整理です。

✅ 保有を続ける材料

  • 17年間減配なし・6期連続増配という、還元姿勢の一貫性
  • 配当性向40%は利益が2割下振れしても維持できる余裕のある水準
  • 金利上昇の恩恵はまだ通期分をフルには享受していない(利ざや拡大の余地が残る)
  • 不良債権比率は0.96%→0.80%と改善方向で、資産の質も良好

⚠️ 買い増し前に確認したい点

  • PBR1.769倍は2010年以降のレンジ上限(1.56倍)を超えており、過去に前例のない評価水準
  • 配当利回り2.69%は、私の目安である3%を下回る(3%確保には株価3,200円以下が目安)
  • 純利益の伸びには為替(約+500億円)と市場部門(+1,033億円)の寄与が大きく、環境依存の部分がある
  • CET1比率が1Qでは開示されておらず、資本の余裕度が確認できない

次に確認したいタイミング

中間決算(2026年11月頃)で、次の3点をチェックしたいと考えています。

  1. 市場事業本部の収益が1Qの水準を保てているか(環境要因だったのか、実力だったのか)
  2. CET1比率がターゲットレンジ(9.5〜10.5%)に戻っているか
  3. 下期の自己株式取得が追加で決議されるか

こんな方に向いていると思う銘柄

すでに保有している方にとっては、配当の安心感が非常に高い銘柄です。慌てて売る理由は見当たりません。

一方、これから新規で買う方にとっては、「業績は最高だが価格も最高」という状態です。利回り3%を待つか、増配で利回りが戻るのを待つか——焦らず構えるのが良いのではないかと思います。


この記事の補足コメント

今回の決算を読んでいて印象的だったのは、進捗率30%でも会社が通期目標を上げなかったことです。

数字だけ見れば強気の修正を出してもおかしくない内容でした。それをしなかったのは、市場部門の収益や円安効果が「続くとは限らない」ことを、経営側がきちんと理解しているからでしょう。前回の決算では逆に、配当を予想より12円多く出しています。約束は控えめに、実績は大きく——この姿勢は個人的にとても好感が持てます。

もう一つ、個人的に感慨深いのがPBRです。数年前、メガバンクは「PBR0.4倍の万年割安株」と言われていました。それが今、1.77倍です。同じ会社の同じ株なのに、市場の見方はこれほど変わるのかと。

裏を返せば、割安なときに買って持ち続けた人が報われたということでもあります。今のMUFGはその「割安なとき」ではありません。ですが、17年間減配せずに増配を続けてきた企業を、利回りが戻るまで気長に待つ——そういう付き合い方ができる銘柄だと思っています。

なお、今回の決算短信には「中東情勢を含む地政学的な状況」を踏まえた貸倒引当金の追加調整284億円という記載がありました。こういう地味な数字にも目を配っておくと、次に何かが起きたときの理解が早くなります。


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※ 本記事の株価および各種指標は、記事作成時に取得した特定の日の終値データを使用しています。
※ 本記事は企業が公表した決算短信をもとに、筆者(ネコのシッポ)が独自の視点で分析・執筆したものです。。正確な情報は必ず企業公式サイトの原文をご確認ください。
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