ごあいさつ
こんにちは、ネコのシッポです。
2026年10月7日、JPX総研から大きな発表がありました。TOPIX(東証株価指数)の初回定期入替の選定結果です。新しく35銘柄が加わり、683銘柄が「移行措置銘柄」に指定され、これから2年弱かけて指数のなかでの比重を落としていきます。
今年の相場はAI・半導体が中心で、高配当の小型株はちょっと蚊帳の外みたいな空気もありましたね。
でも今回の発表は、その高配当小型株の需給にじわっと効いてくる話なんです。配当目当てで日本株を持っている方なら、知らんままにしておくのはもったいない。順番に整理していきますね。
導入:なぜTOPIXの入替が高配当投資家に関係あるのか
TOPIXは、東証に上場する多くの銘柄をまとめて見るための株価指数です。1969年から算出されている、日本株の代表的なものさしですね。
ここで大事なのが、TOPIXに連動する運用資産が約160兆円あるという事実です(2026年6月時点、JPX資料)。インデックスファンドや年金資金が、TOPIXと同じ値動きになるように日本株を保有しています。
この仕組みには、見逃せない性質があります。
- 指数に採用されると、連動ファンドが機械的に買う
- 指数から外れると、連動ファンドが機械的に売る
業績の良し悪しとは関係なく、需給だけで売り買いが発生するわけです。
ここで誤解しないでほしいのは、高配当株が狙い撃ちされたわけではないということです。社名から見る限り、683銘柄の業種は建設・食品・IT・サービスなど幅広く散らばっています。特定業種を狙った入替ではありません。
共通しているのは「小型で売買が少ない」という点だけです。
ただ、高配当・低PBRの銘柄を小型株から探してきた方は注意が必要です。持ち株が対象に入っている可能性が、それなりにあります。だから一度確認しておきたい、というわけやね。
なおPBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産の何倍かを示す指標です。1倍割れなら、理論上の解散価値より株価が安い状態ですね。
今回の入替、数字で見る全体像
まずは全体の規模感から押さえましょう。
| 時点 | 継続採用 | 移行措置 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 入替前(26年8月末) | — | — | 1,636 |
| 入替後(26年10月末) | 986 | 683 | 1,669 |
| 移行完了時(28年7月末) | 986 | 0 | 986 |
※ 移行完了時の986銘柄には、2027年10月の再評価で継続基準を満たした移行措置銘柄が上乗せされます。
※ 入替前の銘柄数は2026年8月末時点。JPX資料では将来時点の銘柄数は2026年10月7日現在判明分を反映した数値とされています。
出典:JPX総研「別紙」「TOPIX初回定期入替における選定結果」(2026年10月7日公表)をもとに作成
構成銘柄数は、入替前の1,636から最終的に986まで減ります。ざっくり4割カットですね。
一方で、指数全体の大きさはほとんど変わりません。浮動株時価総額(市場で実際に売買できる株だけで計算した時価総額)の合計は775兆円から766兆円へ、市場カバー率は97.4%から96.4%へ。数が4割減っても、金額ベースではほぼ維持される計算です。
つまり今回減るのは「数は多いが金額は小さい」銘柄群ということ。ここが今回の入替の本質です。
実際、1銘柄あたりの中央値を見ると変化がはっきりします。
| 指標(中央値) | 入替前 | 移行完了時 |
|---|---|---|
| 浮動株時価総額 | 約590億円 | 約1,600億円 |
| 1日あたり売買代金 | 約4.8億円 | 約15.4億円 |
中央値は2倍から3倍に上がります。TOPIXは「広く浅く」から「厚みのある銘柄中心」へ、性格を変えていくわけですね。
新ルールの中身:基準は「流動性」だけ
ここが今回いちばん大事なところです。流動性とは、その株がどれだけ活発に売買されているかの度合いを指します。入替の基準は、次の2つしかありません。
| 指標 | 追加基準(新しく入る) | 継続基準(残る) |
|---|---|---|
| 年間売買代金回転率 | 0.2以上 | 0.14以上 |
| 浮動株時価総額の累積比率 | 上位96%以内 | 上位97%以内 |
専門用語が並ぶので、ざっくり訳しておきます。
年間売買代金回転率は、その会社の株がどれだけ活発に売買されているかを示す数字です。ざっくり言えば「1年間の売買代金÷浮動株時価総額」で、0.2なら1年で浮動株の2割が入れ替わるイメージですね。
正式な計算式はもう少し複雑です。月ごとに「日次売買代金の中央値×営業日数÷月末の浮動株時価総額」を出し、それを直近12か月分合計します。ここでは雰囲気だけ掴んでもらえれば十分です。
浮動株時価総額は先に触れたとおりです。創業家や取引先が持ったまま動かさない株(政策保有株など)は、計算から除かれます。
累積比率 上位96%以内は、基準を満たす銘柄を大きい順に並べて、合計額の96%に達するまでを採用するという意味です。
そしてどこにも配当・ROE・利益の文字が出てきません。業績が良くても、株が売買されていなければ外れます。逆に赤字でも、売買が活発なら残ります。
ここ、ほんまに大事なので繰り返しますね。「TOPIXから外れる=ダメな会社」ではありません。
なお対象市場も広がりました。これまではプライム市場が中心でしたが、今回からプライム・スタンダード・グロースの3市場すべてが対象です。
企業概要:入替銘柄の顔ぶれ
新しく入る35銘柄
スタンダード市場から23銘柄、グロース市場から12銘柄が選ばれました。高配当投資家に馴染みのありそうな名前を挙げてみます。
- 沖縄セルラー電話(9436) … 沖縄のKDDI系通信会社
- ワークマン(7564) … 作業服・アウトドア用品の専門店
- セリア(2782) … 100円ショップ大手
- 日本マクドナルドホールディングス(2702) … 説明不要ですね
- ヱスビー食品(2805)、フクダ電子(6960)、ヨネックス(7906)、ナカニシ(7716)
グロース市場からは、タイミー(215A)、トライアルホールディングス(141A)、フリー(4478)、GO(581A)といった新興勢が入ります。
共通点は、プライム市場でなくても売買がにぎわい、浮動株時価総額も大きいこと。「市場区分ではなく流動性で選ぶ」という新ルールが、そのまま形になった顔ぶれです。
2年弱かけて外れる683銘柄
内訳はプライム572銘柄、スタンダード110銘柄、グロース1銘柄。圧倒的にプライム市場の銘柄が多いのが特徴です。
高配当株としておなじみの業種から、実際の名前を拾ってみます。
- 地方銀行 … 筑波銀行(8338)、清水銀行(8364)、北日本銀行(8551)、東和銀行(8558)、フィデアホールディングス(8713)
- 証券 … 東洋証券(8614)、水戸証券(8622)、いちよし証券(8624)、極東証券(8706)、アイザワ証券グループ(8708)
- 電力・ガス … 沖縄電力(9511)、広島ガス(9535)
- 鉄鋼 … 共英製鋼(5440)、大阪製鐵(5449)、合同製鐵(5410)、中部鋼鈑(5461)
- 自動車部品 … ユニプレス(5949)、エイチワン(5989)、中央発條(5992)、ヨロズ(7294)、フタバ産業(7241)
- 商社 … 佐藤商事(8065)、神鋼商事(8075)、蝶理(8014)、明和産業(8103)
- 不動産 … フジ住宅(8860)、FJネクストホールディングス(8935)、グランディハウス(8999)
- その他 … ベルーナ(9997)、チヨダ(8185)、ヨンドシーホールディングス(8008)、ナガイレーベン(7447)
高配当・低PBR銘柄を探したことがある方なら、見覚えのある名前が並んでいるのではないでしょうか。
ちょっと面白いのが沖縄勢です。沖縄セルラー電話が新規追加、沖縄電力が移行措置。同じ地域の会社でも、流動性の基準では違う側に振り分けられました。
なお銘柄ごとの回転率や浮動株時価総額の実数値は公表されていません。どの指標でどれだけ届かなかったのかは、外からは分かりません。
移行措置:いきなり全部売られるわけではない
683銘柄が10月30日に一斉に売られる——そんな心配をされた方もいるかもしれません。でも、実際の設計はもっと穏やかです。
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
※ 2027年10月の再評価で継続基準(年間売買代金回転率0.14以上・浮動株時価総額の累積比率 上位97%以内)を満たした銘柄は、50%の水準で低減が止まります。
出典:JPX総研「別紙」(2026年10月7日公表)をもとに作成
移行措置銘柄には「移行係数」という掛け目がかかります。指数の中でのウエイトを、この係数の分だけ減らしていく仕組みです。
2026年10月に87.5%へ下がり、そこから四半期ごとに12.5ポイントずつ。8回かけて2028年7月にゼロになります。1回あたりの売り圧力は、全体の8分の1ずつという設計ですね。
そして2027年10月に再評価があります。ここで継続基準(回転率0.14以上・累積比率 上位97%以内)を満たせば、低減は50%の水準で止まります。つまり、指数から完全には外れずに残れるわけです。
これは企業にとって明確なインセンティブになります。株式分割で売買単位を下げる。政策保有株を解消して浮動株を増やす。IR(投資家向け広報)を強化して注目度を上げる。こうした取り組みが、そのまま再評価の結果に効いてきます。
判断:高配当投資家は、ここだけ押さえればいい
| 指標 | 入替前 | 移行完了時 | 影響 |
|---|---|---|---|
| PER(加重) | 21.1 | 21.2 | +0.1 |
| PBR(加重) | 1.88 | 1.90 | +0.02 |
| 配当利回り(加重) | 1.85% | 1.83% | −0.02pt |
| 区分 | 入替前 | 移行完了時 | 影響 |
|---|---|---|---|
| Core30(超大型) | 42.3% | 44.6% | +2.2pt |
| Large70(大型) | 25.8% | 25.9% | +0.0pt |
| Mid400(中型) | 24.7% | 24.1% | −0.6pt |
| Small(小型) | 7.2% | 5.5% | −1.7pt |
※ 移行完了時のデータは、2026年10月のTOPIXニューインデックスシリーズの定期選定結果から移行措置銘柄を除いた分布。
※ 将来の実績値ではなく、同一の計算条件で入替の影響だけを試算した値です。
出典:JPX総研「別紙」(2026年10月7日公表)をもとに作成
1. TOPIX連動ETFの分配金が激減する話ではない
いちばん気になるのはここでしょう。ETFは上場投資信託の略で、証券取引所で株と同じように売買できる投資信託のことです。
JPXの試算では、指数全体の配当利回り(加重平均)は1.85%から1.83%へ、わずか0.02ポイントの低下にとどまります。
PER(株価収益率。利益の何倍の株価か)は21.1から21.2、PBRは1.88から1.90。どれも誤差の範囲ですね。TOPIX連動のインデックスファンドを積み立てている方は、慌てる必要はなさそうです。
ただし、これは同じ計算条件で入替の影響だけを取り出した試算値です。実際の利回りは各社の増配・減配で動きますので、そこは切り分けて考えてください。
2. 高配当の代表「銀行業」のウエイトはむしろ増える
33業種別で見ると、**増加が最大なのは銀行業(+0.2ポイント)**でした。減少が最大のサービス業でも−0.1ポイントです。
高配当投資の主戦場である銀行セクターは、指数の中での存在感を保ちます。移行措置リストに地銀が並ぶので心配になりますが、業種全体では増えるわけですね。
ただしJPXが公表しているのは業種単位の集計値だけです。銀行業の中でメガバンクと地銀の比重がどう動くかは、公表データからは分かりません。「小さい銀行が抜けた分、大きい銀行の比重が上がるはず」というのは、あくまで筋から考えた推測です。
3. 効いてくるのは「小型のウエイトが減る」こと
次は規模別です。TOPIXは構成銘柄を、時価総額と流動性にもとづいて4つに分類しています。Core30(超大型30銘柄)、Large70(大型70銘柄)、Mid400(中型400銘柄)、そしてSmall(それ以外の小型)ですね。
ここははっきり動きます。Core30が42.3%から44.6%へ+2.2ポイント。一方でSmall(小型)は7.2%から5.5%へ−1.7ポイントです。
これは高配当投資家に地味に効いてきます。小型の高配当株へ流れていたインデックスマネー(指数に連動して動く運用資金)が、細っていくからやね。指数に支えられた買いが減れば、株価は会社の中身をより素直に映すようになります。
4. 683銘柄の「売り」は予定表つきで決まっている
移行措置銘柄については、売り需給が2年弱にわたって続くことが、すでに公表されています。しかも日付つきで。
ただし、この情報は全員が知っているという点が大事です。発表された瞬間から、株価には織り込みが始まります。「これから下がるに違いない」と決めつけて売り急ぐのは、むしろ危ない動きかもしれません。
現実的には「四半期ごとに需給の重さがかかる局面が続く」くらいの受け止めで十分です。買い増しのタイミングは、焦らなくていいということですね。
5. 2027年10月の再評価が分岐点になる
保有銘柄が移行措置リストに入っていた場合、注目すべきは2027年10月の再評価です。
会社側が流動性を改善できれば、低減は50%で止まります。具体的には、株式分割、政策保有株の解消、自己株式の取得と消却、IRの強化など。こうした動きが出てきたら、「再評価を意識しているな」と読めるわけです。
実はこれ、高配当投資家にとっては追い風にもなり得ます。株主還元の強化は、流動性の改善と方向が重なることが多いわけやね。
6. 保有銘柄が683に入っていたら、何をするか
最後に、実際の動き方を3つにまとめます。
- まず照合する … JPXの公表資料で、保有銘柄のコードが683銘柄のリストにあるか確認する
- 理由で売らない … 「指数から外れるから」ではなく、業績・配当方針・自己資本といった配当の原資を見て判断する
- 流動性の低下は覚えておく … 板が薄くなると、売りたいときに思った値段で売れないことがあります。ロットの大きい方ほど影響を受けます
まとめ
今回は、2026年10月7日に公表されたTOPIX初回定期入替を、高配当投資家の目線で整理しました。ポイントをおさらいします。
- 構成銘柄は1,636 → 1,669(うち移行措置683)→ 986へ。数は4割減るが、浮動株時価総額の合計はほぼ維持
- 選定基準は流動性だけ。配当・業績・ROEは一切見ていない。外れる=悪い会社ではない
- 移行措置銘柄は四半期ごと8回、2028年7月までかけて段階的にウエイト低減。一度に売られるわけではない
- 指数の配当利回りは**1.85%→1.83%**とほぼ横ばい。連動ETFの分配金が急変する話ではない
- 本当に効くのは小型のウエイト減少(7.2%→5.5%)。小型高配当株は指数マネーの支えが薄くなる
- カギは2027年10月の再評価。流動性を改善できた銘柄は50%の水準で踏みとどまれる
指数のルール変更は、地味やけど効き目の長いイベントです。慌てて売買するより、「自分の持ち株はどっち側か」を一度確認しておく。それだけでも十分な備えになると思いますよ。
それでは、また次回。ネコのシッポでした。
【免責事項・投資のご判断について】
※ 本記事の数値は、JPX総研が2026年10月7日に公表した「TOPIX初回定期入替における選定結果」および「別紙」に記載された内容を使用しています。
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